一般公益社団法人高齢者生活支援まとめ|高齢者が筋肉を維持するために必要な習慣とは|安全で効果的な運動と栄養の知恵

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高齢者が筋肉を維持するために必要な習慣とは|安全で効果的な運動と栄養の知恵

【掲載日】2025.05.27
高齢者が筋肉を維持するために必要な習慣とは|安全で効果的な運動と栄養の知恵
目次
  1. 筋肉はなぜ衰えるのか|加齢による変化とサルコペニア・ロコモの基礎知識
  2. 動かないことが最大の敵|廃用性萎縮と生活不活発病への理解
  3. 高齢者に適した運動の選び方|有酸素運動と筋トレの役割と違い
  4. 筋トレを安全に続けるための工夫|頻度・休息・動作のポイント
  5. 毎日の暮らしで筋肉を使う工夫|散歩・階段・家事で動ける体へ
  6. 食事と筋肉の深い関係|高齢者に必要なたんぱく質と栄養バランス
  7. 習慣として定着させるコツ|楽しく続ける運動と健康のある暮らし

筋肉はなぜ衰えるのか|加齢による変化とサルコペニア・ロコモの基礎知識

高齢になると「体力が落ちた」「すぐ疲れるようになった」と感じる方が多くなります。その要因のひとつに、筋肉量の減少があります。筋肉は全身の動きを支えるだけでなく、体温維持、代謝、内臓の支えなど、さまざまな役割を果たしています。筋肉が衰えることは、単に動けなくなるだけでなく、生活全体に深刻な影響を与えるのです。

年齢とともに自然に筋肉は減少しますが、それがどのように進行し、どんな影響を及ぼすのかを知ることが、予防と対策の第一歩になります。

筋肉はなぜ衰えるのか|加齢による変化とサルコペニア・ロコモの基礎知識

1-1年齢による筋肉量の推移

このように筋肉量は加齢とともに自然に減少します。特に60歳を超えると、年間2~3%の割合で急激に筋肉が減っていくとも言われており、放置すれば要介護のリスクが高まってしまいます。

1-2筋肉減少に潜む2つのキーワード

高齢者の筋肉減少に関する代表的な医学的用語には「サルコペニア」と「ロコモティブシンドローム(ロコモ)」があります。それぞれの違いと危険性を理解しておきましょう。

サルコペニア

加齢や疾患により筋肉量・筋力が著しく減少し、身体機能が低下した状態。転倒や寝たきりの原因にもなる。

ロコモティブシンドローム(ロコモ)

筋肉だけでなく骨・関節など運動器全体の機能が低下し、自立生活が難しくなる状態。介護の入口として注目されている。

どちらも単なる筋力の衰えにとどまらず、日常生活動作(ADL)の低下、さらには認知症のリスク増加にもつながることが明らかになっています。

1-3筋肉が減るとどうなる?

筋肉量の減少が引き起こすリスクは非常に多岐にわたります。下記はその代表例です:

  • つまずきや転倒
    下肢筋力の低下により、歩行が不安定に
  • 疲れやすくなる
    基礎代謝の低下で、日常動作が億劫に
  • 姿勢が崩れる
    体幹筋の衰えで背筋が曲がり、腰や膝に負担が集中
  • 免疫力の低下
    筋肉は免疫を支えるアミノ酸の貯蔵庫でもある
  • 認知機能の低下
    運動不足が脳への刺激を減らし、認知症のリスクが上昇

これらはすべて、「気づかないうちに進行している問題」です。筋肉の衰えは突然やってくるわけではなく、静かにしかし確実に身体機能を奪っていきます。

1-4日常の動きが「筋肉の維持」を左右する

筋肉の減少を防ぐためには、日常の中でどれだけ「動いているか」が非常に重要です。使わなければ衰えるのが筋肉。とくに高齢者にとっては、歩く・立ち上がる・階段を上がるといった日常動作こそが、貴重なトレーニング機会なのです。

日常の動きが「筋肉の維持」を左右する

このように、筋肉の衰えは加齢にともなう避けられない変化ではありますが、「知って・意識して・動く」ことで、予防も改善も可能になります。これからの生活を健やかに、自分の足で歩いていくために、筋肉との向き合い方を見直していくことが大切です。

動かないことが最大の敵|廃用性萎縮と生活不活発病への理解

高齢者の健康を脅かすのは、必ずしも大きな病気だけではありません。「動かない」ことそのものが、ゆるやかに、しかし確実に体と心にダメージを与えていくのです。

この「動かないことによる悪化」を正確に理解するためには、廃用性萎縮生活不活発病という2つのキーワードを押さえておく必要があります。これらは日常生活の中で誰にでも起こり得る現象であり、気づいたときにはすでに筋力や身体機能の低下が進んでしまっていることも少なくありません。

動かないことが最大の敵|廃用性萎縮と生活不活発病への理解

2-1用語の整理:廃用性萎縮と生活不活発病の違い

用語 意味 発生要因
廃用性萎縮 筋肉を使わないことで萎縮・衰退する状態 長期入院、骨折、寝たきり、動かない生活
生活不活発病 活動量が低下したことで全身機能が衰える病態 外出控え、家にこもる、趣味や交流の減少

両者は密接に関係しています。動かないことが筋肉や関節を弱らせ、やがては精神的な意欲の低下や、全身状態の悪化につながります。

2-2動かない生活がもたらす「静かな悪化」

静かな悪化

たった数日間の安静が筋肉に与える影響は、思いのほか大きいという事実をご存知でしょうか。ベッドの上で3日過ごすだけで、太ももやふくらはぎなどの筋肉量は目に見えて落ちていきます。特に高齢者の場合、筋肉の回復には時間がかかるため、短期間の「動かない日々」でも大きな機能低下を招いてしまうのです。

「疲れているから今日は外に出ない」「寒いから歩かない」――こうした選択が積み重なることで、気づけば筋肉は衰え、骨は弱り、歩くことすら億劫になるという悪循環が始まります。

2-3高齢者に起こりやすい廃用性萎縮の例

高齢者に起こりやすい廃用性萎縮の例

これらはいずれも、「気づかぬうちに動かなくなっていた」という共通点を持っています。

2-4生活不活発病を防ぐ鍵は「小さな動き」

生活不活発病を防ぐためには、特別な運動ではなく、小さな活動の積み重ねが重要です。以下のような行動が、筋肉や関節の維持に役立ちます:

  • 朝起きたら布団の中で足を上下に動かす
  • テレビを見ながら足踏みをする
  • 歯磨き中にかかと上げをする
  • 買い物は徒歩で出かける(少し遠回りでも)
  • 家事を立ったままの姿勢で行う

こうした行動は見落とされがちですが、筋力低下を防ぎ、気分の向上にもつながる大切な活動です。

2-5動かない生活が引き起こす負の連鎖

「動かない → 筋力が落ちる → 動きづらい → さらに動かなくなる」このサイクルが続くと、寝たきりや要介護のリスクが一気に高まります。

その結果:

  • 外出が減り、社会との接点が少なくなる
  • 認知機能が衰えやすくなる
  • 食欲が減退し、栄養不足に陥る

これらはすべて「動かない」ことに端を発しており、活動量の低下は全身の不調を呼び込む要因であるといえます。

2-6動き続けることが、未来の自分を守る

体調が悪い、寒い、忙しい──そんな日でも、少しでも体を動かす意識を持つことが健康への第一歩です。動かないことの怖さを知ることは、自分自身の未来を守るための最も確実な知識になります。

高齢者にとっての「運動」は、スポーツジムやトレーニングだけではありません。日々の生活動作こそが最良の運動であり、それを「意識的に」「楽しく」続けることが、健康寿命を延ばす最短の道なのです。

高齢者に適した運動の選び方|有酸素運動と筋トレの役割と違い

健康維持や介護予防を目的とした運動を始める際、多くの高齢者が直面するのが「どんな運動をすればいいのか分からない」という悩みです。一言で運動といっても、その種類によって体に与える効果は異なります。特に重要なのは、有酸素運動筋力トレーニング(筋トレ)の違いを理解し、目的に応じて適切に選ぶことです。

ここでは、高齢者の身体特性やライフスタイルを踏まえて、両者の役割や効果的な組み合わせ方、運動メニューの選び方を具体的にご紹介します。

高齢者に適した運動の選び方|有酸素運動と筋トレの役割と違い

3-1有酸素運動と筋トレの違い

運動の種類 目的・効果 代表的な種目
有酸素運動 心肺機能の強化、脂肪燃焼、生活習慣病の予防 ウォーキング、ラジオ体操、踏み台昇降、室内サイクリング
筋トレ 筋肉量の維持・増加、基礎代謝向上、転倒予防 スクワット、かかと上げ、イスを使った腹筋運動

このように、両者の運動は「どちらかだけ」ではなく、目的に応じて両立させることが理想です。有酸素運動は「体力と循環機能の強化」、筋トレは「動くための筋力の維持」に欠かせません。

3-2高齢者におすすめの有酸素運動

年齢や体力に応じて無理なく始められる運動をいくつか紹介します。特に足腰の筋肉を活かしながら、持続的に動けるものが理想です。

ウォーキング
1日15~30分、話しながら歩ける程度の速さで。
踏み台昇降
10~15cmの台を使って上下運動。室内でも可能。
ラジオ体操
音楽と一緒に全身を動かせる、日本人に馴染みのある運動。
水中ウォーキング
膝や腰に負担をかけずに全身運動ができる。

どの運動も「継続できるかどうか」が最重要です。毎日でなくとも、週3回でもよいので、楽しみながらできるものを選びましょう。

3-3高齢者に向いた筋トレの例

筋トレというとハードな印象を持つかもしれませんが、体重や日用品を活用した自重トレーニングでも十分に効果が得られます。以下は家庭でできる筋トレの一例です。

  1. イスに座って太もも上げ

    イスに座った状態で両足をゆっくり持ち上げる。腹筋にも効果あり。

  1. かかと上げ運動

    キッチンで料理中などに、両足のかかとを10回ゆっくり持ち上げ下げ。

  1. 壁スクワット

    壁に背をつけてゆっくり腰を落とす。ヒザに痛みがある場合は無理せず。

いずれも週2~3回、1セット10回を目安に、負担のない範囲から始めましょう。運動前後のストレッチも忘れずに。

3-4組み合わせ方のコツ:有酸素+筋トレ

有酸素運動と筋トレは、それぞれ異なる効果を持つからこそ、バランス良く組み合わせることが推奨されます。以下は実践しやすい例です:

組み合わせ方のコツ:有酸素+筋トレ

これにより、筋肉量の維持だけでなく心肺機能も高まり、日常生活がより快適になります。

3-5運動選びは「体力より継続力」が決め手

「どの運動が一番効くか」よりも、「どの運動なら続けられるか」を基準に選ぶことが大切です。無理に難しい運動を選ばず、できる運動をできる形で続けることこそが、長く健康を保つカギになります。

体の声に耳を傾けながら、自分に合った運動習慣を見つけていきましょう。

運動選びは「体力より継続力」が決め手

筋トレを安全に続けるための工夫|頻度・休息・動作のポイント

高齢者が筋力を維持するには、筋トレが欠かせません。しかしながら「正しい方法で続ける」ことができなければ、逆に関節を痛めたり、疲労を蓄積してしまうリスクもあります。

ここでは、無理なく、安全に筋トレを継続するための基本ポイントを「頻度・休息・フォーム・工夫」の4つの視点から整理していきます。始める前に知っておくだけで、効果や継続性は大きく変わります。

4-1筋トレの頻度|週2~3回が理想

筋トレの効果を出すには「毎日やらなければならない」と思われがちですが、実は週2~3回の筋トレで十分に効果は得られます。

筋肉は、刺激された後に回復する時間で成長します。毎日行うよりも「休ませる時間」をしっかり取ることが重要なのです。

例えば次のようなリズムが理想的です:

月・木
下半身中心のトレーニング
火・金
上半身中心または軽めのストレッチ
水・日
完全休養日(リラックスと栄養補給)

1日おきに行うペースで、疲れが残らないことを第一に考えましょう。

4-2正しい休息で筋肉は育つ

トレーニングを頑張りすぎると、筋肉が回復しないまま次の運動に突入してしまいます。それでは逆効果です。特に高齢者では回復力が若年層より落ちるため、休息を積極的に取り入れることが必要です。

筋トレ後の推奨休息時間 具体的な行動
24~48時間 対象筋群を休ませつつ、ストレッチや軽い有酸素運動で血流を促進
週単位 週2~3回の実施で、残りは完全休養または回復重視の活動

また、睡眠も大切な回復時間です。1日7~8時間の良質な睡眠を確保することが、筋肉の再生を助けます。

4-3動作のポイント|ゆっくり・正確に・呼吸を止めず

  • 反動をつけずに、ゆっくり行う
  • 正しいフォームで、無理な姿勢を避ける
  • 「吐くときに力を入れ、吸うときに戻す」呼吸リズム
  • 痛みが出たらすぐに中止。無理は禁物

動作を丁寧に行うことで、より少ない回数でもしっかり筋肉に刺激が届き、関節や腱への負担も軽減されます。

4-4安全に続けるための5ステップ

とにかく重要なのは「続けられる方法を見つけること」。最初から完璧を求める必要はありません。

4-5無理なく継続するための環境づくり

安全に筋トレを続けるためには、日常生活に自然に組み込む工夫も有効です。

習慣化の工夫
決まった時間にやる・カレンダーに記録する・テレビの前で行うなど、継続しやすい流れを作る。
気分を上げる工夫
お気に入りの音楽を流す、運動着をそろえるなど、楽しみながら続けられる仕掛けを作る。

安全かつ効果的に筋トレを行うことは、高齢者にとって大きな自信にもつながります。「できた」という感覚が、明日の活力を生み出す原動力になるのです。

毎日の暮らしで筋肉を使う工夫|散歩・階段・家事で動ける体へ

特別な運動メニューを毎日続けるのは、高齢者にとって決して簡単なことではありません。体調や天候、気分、生活リズムなど、続けられない要因はたくさんあります。

だからこそ、「運動は生活の中に溶け込ませる」ことが理想です。日々の家事や移動、習慣的な行動を見直し、筋肉を自然に使える暮らし方を意識するだけで、体は着実に変化していきます。

毎日の暮らしで筋肉を使う工夫|散歩・階段・家事で動ける体へ

5-1暮らしの中に潜む「運動の種」を見つけよう

日常生活には、気づかぬうちに筋肉を使っている場面がいくつもあります。以下はその代表例です:

  • 食器を棚に戻すとき:腕・肩の筋肉
  • 洗濯物を干す・取り込む:腕・背中の筋肉
  • 掃除機をかける:体幹・下半身のバランス筋
  • 布団の上げ下げ:腰・脚・握力
  • 買い物袋を持って歩く:前腕・背筋・下肢筋

こうした動作に「意識」を加えることで、筋トレに匹敵する負荷を生み出すこともできます。

5-2時間帯別:筋肉を使う生活リズムの例

時間帯 意識すべき動作・工夫
布団の上でストレッチ→起き上がり動作→朝食準備で立ち作業を意識
買い物や散歩を取り入れた移動・座りすぎを防ぐため30分ごとの立ち上がり
料理・洗い物・片付けの中で姿勢を意識/重い鍋や米の持ち上げで腕を活用
入浴前の軽いストレッチ/階段の上り下りを丁寧に行う

特別な運動の時間が取れない日でも、生活リズムにあわせて「使う意識」を持つだけで、身体への刺激量は大きく変わります。

5-3アクション別:暮らしに組み込める運動例

  1. 階段を活用する

    毎日1~2回でも階段を上り下りすることで、下半身の筋力と心肺機能が鍛えられます。エレベーターやエスカレーターの代わりに「1フロアだけ階段」を意識するだけでも効果的です。

  2. 掃除・片付けをトレーニングに

    しゃがむ・立つ・手を伸ばすなどの動作が自然と全身運動になります。意識して大きな動きを取り入れましょう。

  3. 家の中での「ながら足踏み」

    テレビを見ながら、電話をしながら、その場で足踏みを10~20回。バランスと足腰の刺激に。

5-4無意識の「ラク」が筋力を奪うことも

生活の中では、「便利だから使っているもの」が知らず知らずのうちに筋肉の使用を減らしているケースもあります。以下のような「ラク」には要注意です:

注意すべき「ラク」
  1. 電動ベッドやリクライニングで起き上がる
  2. 室内でも常にキャスター椅子を使用
  3. 買い物をすべてネットに頼り、外に出ない
  4. 宅配・デリバリーが常態化している

もちろん必要に応じた便利機器の活用は大切ですが、「自分で動ける部分」は積極的に使う意識を持つことが、健康維持には不可欠です。

5-5楽しさや習慣化が継続の秘訣

楽しさや習慣化が継続の秘訣

体を動かすことを「義務」と感じてしまうと、どうしても続かなくなってしまいます。掃除や買い物などの家事に運動の要素を見出したり、好きな音楽やテレビを楽しみながら動く「ながら運動」もおすすめです。

また、記録をつける、家族と一緒に行う、ご褒美を設定するなど、楽しみを加える工夫があれば、自然と動くことが習慣になります。

特別な器具も、時間も、服装も必要ありません。暮らしの中にこそ、筋肉を支える無数の「運動チャンス」が存在しています。

食事と筋肉の深い関係|高齢者に必要なたんぱく質と栄養バランス

高齢者が筋肉を維持するうえで、運動と並んで不可欠な柱となるのが「食事」です。どれだけ運動を頑張っても、筋肉をつくる材料=たんぱく質が不足していれば、筋肉はつくられません。逆に言えば、食事を工夫することで、身体の内側から筋肉の維持・回復を後押しすることが可能です。

とくに高齢者では、加齢とともに「筋肉が作られにくくなる」ことがわかっています。そのため、たんぱく質の質と量、摂取のタイミング、他の栄養素との組み合わせなど、いくつかのポイントを押さえる必要があります。

食事と筋肉の深い関係|高齢者に必要なたんぱく質と栄養バランス

6-1筋肉とたんぱく質の関係

私たちの筋肉は、主にたんぱく質からできています。たんぱく質は筋肉だけでなく、皮膚・内臓・髪の毛・ホルモン・免疫細胞など、あらゆる組織を構成しています。

高齢者にとって特に重要なのは、筋肉の分解が進みやすい体に、十分なたんぱく質を届けること。それによって、筋肉の減少を最小限に抑えることができます。

必要量の目安: 体重1kgあたり1.0~1.2gのたんぱく質が、健康な高齢者に推奨されています(例:体重60kgの人で60~72g/日)。

これは一般成人の基準(約0.8g/kg)より高く、食事の中で意識的に摂らなければ不足しがちになります。

6-2吸収性で選ぶたんぱく質の種類

たんぱく質は、その「質」も重要です。食品によって、アミノ酸の構成や吸収率が異なり、筋肉合成への効果も変わります。高齢者におすすめしたいのは、消化吸収がよく、アミノ酸バランスの良い高たんぱく食材です。

低脂肪で消化も良好。特に白身魚や青魚はアミノ酸バランスも優秀。焼き魚、煮魚、缶詰も使いやすい。

栄養価が高く、料理にも使いやすい万能食材。1日1個は習慣にしたい。

大豆製品

豆腐・納豆・豆乳は植物性たんぱくの代表。胃腸にもやさしく、毎食に取り入れやすい。

肉類ももちろん優れたたんぱく源ですが、脂質が多く消化に時間がかかるため、胃腸が弱い方には脂身の少ない部位(鶏むね肉やヒレ肉)を選ぶと安心です。

6-3栄養の相乗効果を生む組み合わせ

たんぱく質だけに注目するのではなく、筋肉の合成を助ける栄養素をセットで摂ることで、より高い効果が期待できます。

栄養の相乗効果を生む組み合わせ

これらを意識的に食卓に取り入れることで、筋肉の合成がより効率的に行われます。

6-41回ではなく「1日全体」で考える摂取タイミング

たんぱく質は一度に大量に摂ればよいというものではありません。1日の中で分散して摂取することで、筋肉への合成効率が高まります。

おすすめの摂取バランス:朝食20g・昼食25g・夕食25g・間食10g の合計80g前後を目標に。

高齢者は朝食のたんぱく質量が特に少ない傾向があります。目玉焼き+納豆+豆腐の味噌汁などを組み合わせるだけでも、15~20gを無理なく摂取可能です。

6-5噛む・飲み込む力が弱い方への配慮

高齢になると、噛む力や飲み込む力が低下することで、固い肉や乾いた食品を避けるようになる方が増えます。その結果、たんぱく質の摂取量が減少してしまうリスクがあります。

そこで、以下のような調理法・食材選びが効果的です:

また、市販の「高たんぱくゼリー」や「プロテイン入りヨーグルト」も、喉に負担をかけず補助的に活用できます。

6-6たんぱく質を補うサプリメントの考え方

食事からの摂取が難しい場合、サプリメントでの補助も一つの選択肢です。ただし、選び方と使い方には注意が必要です。

種類 特徴・使い方
ホエイプロテイン 牛乳由来。吸収が早く、筋肉合成に向いている。水や牛乳に溶かして飲用。
魚肉ペプチド 消化吸収が良く、胃腸が弱い方にも安心。料理に混ぜて使える製品もあり。
アミノ酸サプリ 筋肉合成に関与するロイシンなどを直接補える。食事量が極端に少ない場合に。

ただし、サプリメントはあくまで「補助」として活用し、基本は食事での摂取を目指しましょう。

6-7食欲が出ない日の工夫と提案

体調や気分によって、食欲がない日も当然あります。そのようなときに役立つのが、調理・見た目・香り・量の工夫です。

食欲が出ない日の工夫と提案

無理をせず、少しでもたんぱく質と栄養素が摂れる形を工夫していきましょう。

6-8体の内側から筋肉を支える「食べる力」

筋肉を維持するためには、運動と同じくらい「食べること」が大切です。たんぱく質は筋肉の材料であると同時に、全身の回復やエネルギー代謝、免疫にも関与する重要な栄養素です。

毎日の食事を少しだけ意識することで、筋肉は内側からしっかり支えられ、活動的な生活の基盤となります。今日の一食が、明日の歩行力や立ち上がり力に直結する――そんなイメージで、楽しみながら「食べる力」も育てていきましょう。

習慣として定着させるコツ|楽しく続ける運動と健康のある暮らし

どれだけ正しい運動や栄養の知識を持っていても、それが「続けられるかどうか」で効果は大きく変わります。高齢者にとって、運動や栄養管理は一時的な目標ではなく、「暮らしの中に自然と組み込まれていること」が理想です。

ここでは、日々の生活の中で無理なく取り組み、それを習慣として定着させるためのヒントをご紹介します。

習慣として定着させるコツ|楽しく続ける運動と健康のある暮らし

7-1行動が変わる4つのきっかけ

習慣化には、きっかけとなる「行動のスイッチ」を生活の中に設定することが有効です。

1. 時間で決める

「朝食後にストレッチ」「夕食前に足踏み」のように、時間帯に結びつけておく。

2. 場所で決める

「テレビの前に踏み台を置く」「台所にかかと上げ用の目印を貼る」など、場所と結びつけて定着。

3. 行動と組み合わせる

歯磨き中に片足立ち、電話中にストレッチ。既存の行動に「ついでの運動」を組み込む。

4. 記録する

ノートやカレンダーに運動日・内容・気分などを簡単に記録して、見える形で自信に変える。

7-2「楽しさ」は最高のモチベーション

無理なく続けるには「義務」ではなく「楽しみ」として運動や食事を取り入れることが効果的です。

「続けたい」より「またやりたい」と思える内容を意識することで、習慣は自然と定着していきます。

7-3環境を味方につける工夫

人は環境によって行動が左右されます。運動しやすい環境・食事が整いやすい環境づくりを意識すると、続けるハードルは一気に下がります。

  • トレーニングマットや踏み台など、器具を見える場所に置く
  • 冷蔵庫にゆで卵や豆腐など、すぐ食べられるたんぱく源を常備する
  • 「運動用の部屋」「休憩スペース」など、場所ごとに役割を決める
  • 玄関先にウォーキング用の靴を出しておく

少しの工夫で、運動や健康的な食習慣が自然な選択肢になります。

7-4人とのつながりが「続ける力」になる

一人で続けるのが難しいと感じたら、誰かと一緒に行うことが継続の強い味方になります。

人とのつながりが「続ける力」になる

小さな社会的なつながりが、行動のモチベーションと心の安定にもつながります。

7-5続けた人だけが実感できる「未来の変化」

運動や食事改善は、今日明日の変化よりも、数週間・数か月後に「なんだか身体が軽い」「よく眠れるようになった」「階段が怖くなくなった」といった形で現れます。

その一歩を踏み出し、少しずつ積み重ねていくことで、自分の体は着実に変わっていきます。そしてそれは、自分の生活を自分の力で守ることにもつながります。

これまでの内容を参考に、「できることから」「楽しく」始めてみましょう。継続する力こそが、健康でいきいきとした人生を支える“本当の筋力”なのです。

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