葬儀費用の平均と内訳を徹底解説|形式別の相場と費用を抑える実践術

葬儀費用の平均はいくら?|最新調査から見る全体像と推移
「もしものとき、葬儀にはいくらかかるのか」。これは高齢者本人はもちろん、家族にとっても大きな関心ごとです。突然の訃報に慌てることなく対応するためにも、葬儀にかかる費用の相場をあらかじめ把握しておくことは非常に重要です。
ここでは、最新の調査データに基づいた葬儀費用の平均額とその推移を紹介しながら、日本における葬儀費用の特徴について整理していきます。
近年の葬儀費用の全国平均:最新は110.7万円
株式会社鎌倉新書が実施した「第5回 お葬式に関する全国調査(2022年)」によると、2020年~2022年にかけての全国平均葬儀費用は110万7,000円でした。この数値は、コロナ禍により葬儀の簡略化が進んだことが背景にあります。
一方、コロナ禍以前である「第4回調査(2020年)」では208万200円という数字も示されており、わずか数年で約100万円近く差があることがわかります。
調査結果に基づく比較表
調査年度 | 調査名 | 平均費用(総額) | 備考 |
---|---|---|---|
2022年 | 第5回 全国調査 | 110万7,000円 | コロナ禍の影響で家族葬・直葬が主流 |
2020年 | 第4回 全国調査 | 208万200円 | 一般葬主体の時期、接待・返礼品費が高額 |
このように、パンデミックによる社会変化は葬儀文化にも大きな影響を与えており、「小規模かつシンプルな葬儀」が浸透しつつある状況です。
世界的に見ても高額な日本の葬儀費用

実は、日本の葬儀費用は世界でもトップクラスの高額水準にあるといわれています。その理由として、宗教儀式への比重の高さ(読経・戒名)や、接待・贈答文化の強さが挙げられます。
欧米諸国では、シンプルな火葬のみで終える形式や、直葬を一般的に選ぶ国も多く、国民の金銭感覚に違いがあることが反映されています。
葬儀費用が“ピンキリ”になる理由
平均が110万円と聞いても、「実際に自分の家庭ではどうなのか」という実感がわきづらい方も多いでしょう。それは、葬儀の内容が形式・地域・人数・宗教・希望によって柔軟に変動するためです。
- 地方と都市部での斎場費用の差
- 参列者の数に応じた飲食・返礼品の費用
- お布施や戒名料の金額が寺院ごとに異なる
- 葬儀社によってセットプランの範囲が異なる

つまり、“平均”はあくまで目安であり、実際には「費用が倍近くになるケース」もあれば「半額以下で済むケース」も珍しくありません。
数字だけで判断せず、「構成の中身」を見ることが重要
葬儀費用を考える際、最も大切なのは「いくらかかったか」ではなく、「何にいくらかかったか」を理解することです。
次の項目では、葬儀費用の具体的な内訳(葬儀本体・飲食・返礼品・お布施など)を詳細に解説していきます。費用の全体像が見えたうえで、実際の支払い構造をつかむことが、予算設計やトラブル回避につながります。
費用の内訳を解剖|葬儀・飲食・返礼品・お布施の実情
「葬儀費用が平均110万円」と言われても、具体的に何にいくらかかるのかが分からなければ、準備も対策も難しいものです。葬儀費用は大きく分けて次の4項目に分類され、それぞれにかかる金額と考慮すべき点があります。

代表的な4つの費目
通夜・葬儀・告別式・火葬までの基本的な進行にかかる費用です。
- 斎場・火葬場の使用料
- 祭壇、棺、骨壺、遺影写真
- 搬送費、ドライアイス、受付用品など
葬儀社によってセット内容は異なるため、事前確認が重要です。
参列者への「通夜振る舞い」「精進落とし」などの接待にかかる費用です。
- 寿司・オードブル・飲料
- 会食会場や控室の使用料
人数に応じて費用が大きく変動しやすい項目です。
参列者や香典提供者に渡す「会葬返礼品」や「香典返し」の費用です。
- タオル・お茶・ギフトカタログ等
- 2,000~3,000円が平均単価
後日改めて贈る場合は「半返し~1/3返し」が目安になります。
宗教者に対する謝礼としての「お布施」は、基本費用とは別に必要です。
- 読経料・戒名料・車代・御膳料など
- 金額は地域や宗派、寺院によって異なる
事前に寺院と話し合い、納得できる形にすることが大切です。
コロナ禍での費用変動|接待費・返礼品は減少傾向
感染拡大防止の観点から、会食の取りやめ・規模の縮小が広まり、飲食接待費や返礼品の支出は減少傾向にあります。その分、シンプルなプランや一日葬・直葬などを選ぶケースが増え、葬儀費用全体の圧縮につながっています。
ただし、接待を省略した代替として「高品質なギフト」や「弔電セット」などに予算を割くケースもあり、単純な“費用減”とは言い切れません。

【実例】シンプルな家族葬の想定費用内訳

形式を工夫すれば、平均よりも費用を抑えながら、満足度の高い葬儀も可能です。
「何が含まれているか」を必ず確認
見積書に表示される「◯◯プラン●万円」の中に何が含まれ、何が含まれていないのかを事前に確認することが極めて重要です。
特に、遺体搬送費・ドライアイス費・受付設営費などは別料金になる場合があり、トータルでは大きな差になることもあります。
このあと紹介する「葬儀形式ごとの費用差」や「高くなる要因」を踏まえることで、より実践的な予算計画を立てられるようになります。
葬儀形式ごとの費用比較|一般葬・家族葬・一日葬・直葬の違い
現代の葬儀では「どのような形式で送り出すか」によって、費用・所要時間・準備内容が大きく異なります。従来の一般葬に加え、家族葬・一日葬・直葬といった形式も選ばれるようになり、選択肢が広がる一方で「どれを選べばいいか分からない」という声も増えています。
この章では、各葬儀形式の特徴と費用相場をわかりやすく比較しながら、家族に合ったスタイルの見つけ方を考えます。
葬儀形式4種の基本比較表
形式 | 流れ | 平均費用 | 参列者数の目安 | 特徴 |
---|---|---|---|---|
一般葬 | 通夜+告別式+火葬 | 100~200万円 | 50人以上 | 昔ながらの形式で地域のつながり重視 |
家族葬 | 通夜+告別式+火葬 | 70~120万円 | 10~30人 | 近親者中心で落ち着いた雰囲気 |
一日葬 | 告別式+火葬 | 50~90万円 | 10~20人 | 短時間で済む。費用も軽減しやすい |
直葬(火葬式) | 火葬のみ | 10~50万円 | ごく少数(数名) | 儀式を省略し費用を最小限に抑える |
それぞれの形式のポイント解説
-
一般葬
最も正式な葬儀スタイルで、会社関係・友人・知人など広く案内するため、費用は最も高くなりがちです。香典収入で一部相殺できることもありますが、接待や返礼品のコストもかさみます。
-
家族葬
少人数での静かな見送りが可能。費用も一般葬に比べて抑えられますが、参列できなかった人からの後日弔問が増え、香典返しの対応に追われる可能性もあります。
-
一日葬
通夜を省略し、1日で告別式と火葬を行うため、時間的・経済的負担が小さいのが特徴です。ただし、宗教者によっては「通夜抜きの葬儀」を快く思わないケースもあり、事前確認が必要です。
-
直葬(火葬式)
もっとも簡略化された形式で、儀式を行わず火葬場で簡単なお別れをするケースが多いです。費用は最小限に抑えられますが、「お別れの時間が少なすぎて後悔した」という声も少なくありません。
形式を選ぶ際のポイントと注意点
- 故人の希望・宗教的背景を考慮する
- 親族間の合意を事前にとる
- 香典を受け取るか否かを決める
- 直葬だと香典が受け取れず、収支がマイナスになりやすい
- 一日葬は対応していない寺院もある
- 家族葬は訃報を伏せると後日トラブルの可能性も
形式ごとに明確なメリット・デメリットがあるため、「予算」だけでなく「家族の希望」や「宗教的配慮」などもふまえて総合的に判断することが大切です。
葬儀費用が高くなる理由|オプションや参列者数の影響とは
「予算は100万円で大丈夫と聞いていたのに、実際は130万円かかった…」
このような声は決して珍しいものではありません。葬儀費用は基本プランに加えて、状況に応じて追加料金が発生する“変動型”の費用体系です。

この章では、見積もりと実費が乖離する要因や、費用が膨らむ代表的な要素を詳しく見ていきましょう。
基本プランの落とし穴
「セットに含まれていない」ものが多い
多くの葬儀社が提示する「基本プラン」には、祭壇・棺・骨壺・遺影・式場使用料などの必須項目が含まれています。ですが、実際にはそれ以外の細かい費用が多数発生します。
- ドライアイスの追加(安置日数が延びた場合)
- 湯灌(遺体を洗い清める儀式)
- お別れ花(祭壇に飾る生花の追加)
- 司会進行の依頼料
- 控室や待合室の延長利用料
「含まれていると思っていたが、実はオプションだった」というケースは非常に多く、説明不足や確認不足から費用のズレにつながるのです。
オプションによる追加費用
「こだわり」が積み重なる落とし穴
葬儀は故人との最期の時間を演出する場でもあるため、遺族の思いから「こだわりの演出」を加えたくなることがあります。
-
湯灌(ゆかん)亡くなった方の身体を洗い、衣服や化粧を施す儀式。基本料金には含まれず、追加で5万~15万円が必要になるケースがあります。
-
棺・骨壺のグレード変更棺の材質や内装、骨壺のデザインにこだわる場合、基本仕様からのアップグレードで2~10万円程度が上乗せされます。
-
車両(霊柩車・マイクロバス)出棺用の霊柩車や親族の移動用マイクロバスの利用も、オプション扱いになることがあり、移動距離に応じて料金が変動します。
-
祭壇の装飾変更花祭壇や特注の装飾に変更した場合、10万円~数十万円規模の費用増になることも。希望がある場合は必ず事前確認を。
こうした追加はひとつひとつは小さく見えても、重なると数十万円単位で総額が増えることも少なくありません。
参列者の人数が増えると、費用は比例して増える
意外と見落とされがちなのが、参列者の数=変動費用の増加という構造です。人数が増えれば、飲食・返礼品・座席・控室・駐車場など、さまざまな点でコストが積み上がります。
たとえば以下のような費用が発生します
- 通夜振る舞い(1人あたり3,000円~5,000円)
- 香典返しの品(平均単価2,000円~3,000円)
- 控室や会場の広さの追加料金
- 案内スタッフや警備人員の増員
さらに、当日の飛び入り参列者に対応する必要が出てくると、返礼品の追加購入や予備食の手配など、予算に計上されていなかった支出が生じることもあります。

見積もり外でよくある“想定外の出費”とは?
以下のような出費は見積もりに明示されないことが多く、「あとから請求」で驚くパターンも存在します。
- 遺体搬送の距離加算(例:病院から自宅、→ 斎場へ移動)
- 安置施設の延長利用料金(日数オーバー時)
- 宗教者への「追加読経」「法話依頼」による謝礼増
- 火葬場使用料の地域差(公営・民営で金額が異なる)
こうした支出は、遺族が当日現場で初めて知ることも少なくなく、「事前に聞いておけば良かった」という後悔にもつながります。
費用膨張を防ぐための事前チェックリスト
トータル費用を適切にコントロールするためには、事前に次の点を葬儀社としっかり確認することが重要です。
- 提示されたプランの「含まれる内容」「含まれない内容」は?
- 飲食・返礼品の「人数増加時の追加料金」は?
- 宗教者への謝礼(お布施)の相場と支払いタイミングは?
- 湯灌・花装飾・車両などのオプション有無と単価は?
- 火葬場利用料や搬送距離による追加費用の有無は?
また、見積もりを受け取ったら、必ず「明細書つき」の見積もりをもらうようにしましょう。セット料金だけでは、内容の妥当性を判断するのが困難です。
「気づいたら150万円」にならないために
葬儀費用が膨らむ主な要因は、「オプションの積み重ね」と「参列者による変動費」です。プラン選びの時点で安く見えても、あとから積み上がる費用を見越して、余裕を持った予算設計が重要です。
必要な費用・不要な費用を冷静に見極め、「見積もり=総額ではない」という前提で動くことが、家族の金銭的負担や精神的ストレスを最小限に抑える鍵となります。
そこで、こうした費用増を避けるために有効な「節約術」や「賢い見積もりの取り方」について具体的に紹介していきます。
費用を抑えるための6つの工夫|事前準備・制度活用・見積もり術
葬儀は人生の最後を締めくくる大切な儀式である一方で、予期せぬタイミングで発生する大きな出費でもあります。突然の支出に慌てないためには、あらかじめ費用を抑える工夫や選択肢を知っておくことが重要です。
ここでは、実際に活用できる「費用を抑える6つの具体的な工夫」を紹介します。単に安くするのではなく、満足感と納得感を両立させるためのポイントに絞って解説していきます。

1葬儀の規模を見直す
最も基本的かつ効果的な費用削減策は、「葬儀の規模を小さくすること」です。参列者を限定することで、会場費・飲食費・返礼品などの変動費が抑えられます。
選択肢別の費用比較例
- 一般葬:100~200万円
- 家族葬:70~120万円
- 一日葬:50~90万円
- 直葬:10~50万円
一見シンプルな直葬は費用面で非常に有利ですが、「儀式なし」に戸惑う親族もいるため事前の話し合いが不可欠です。形式を見直すことで費用が50%以上変わるケースもあるため、柔軟に検討することをおすすめします。
2生前に葬儀内容を決めておく
「終活」の一環として、自分の葬儀内容を生前に決めておく人が増えています。生前契約を結ぶことで、費用面のトラブルや遺族間の意見対立を防ぐことができます。
生前準備で得られるメリット
- 費用の見通しが立つ
- 本人の希望を確実に反映できる
- 「生前割引」でプラン料金が安くなることも
本人が元気なうちに家族と葬儀の話をすることは、縁起が悪いと思われがちですが、実際には遺族の負担を大きく減らす「思いやりの行動」として高く評価されています。
3複数社から相見積もりを取る
「急いで決めてしまった葬儀社が、他よりずいぶん高かった…」という声は後を絶ちません。葬儀費用を抑えるうえで非常に有効なのが、相見積もり(複数社からの見積もり取得)です。
- 葬儀社によって含まれるサービスが異なる
- 同じプラン名でも価格・内容に差がある
- 競合があると「値引き交渉」もしやすい


相見積もりを取る場合は、必ず「内訳まで明記された詳細見積もり」を依頼しましょう。総額だけで比較すると、本質的なサービスの違いを見逃してしまいます。
後半では、残りの節約術3つ(公的制度の活用・香典の利用・保険や信託の活用)を取り上げ、具体的な金額の目安や申請方法などにも触れていきます。
4公的な補助制度を活用する
葬儀費用の一部は、健康保険や自治体の制度を使って補助を受けられる場合があります。ただし、自動で支給されるものではなく、自分から申請する必要があるため、制度内容を知っておくことが重要です。
制度名 | 対象者 | 支給額 | 申請先 |
---|---|---|---|
埋葬料(健康保険) | 被保険者・被扶養者 | 5万円 | 勤務先・協会けんぽ |
葬祭費(国民健康保険) | 被保険者 | 自治体により3万~7万円 | 市区町村役場 |
葬祭扶助(生活保護) | 生活保護受給者 | 大人:最大20万6,000円 | 福祉事務所 |
これらの制度を知らずに請求しないまま時効を迎えるケースもあるため、葬儀後2年以内には申請を済ませましょう。
5香典を有効に活用する
香典は本来、遺族への「金銭的な助け」の意味合いも含まれており、葬儀費用の一部に充当することがマナー違反になることはありません。
ただし、香典を使う前提なら、「香典返しの費用」も含めて計算する必要があります。
- 香典収入が70万円 → 半返しで約35万円の返礼費が必要
- 香典はその場で渡されるが、返礼品は後日になることも
- 数が多い場合、業者に一括依頼した方が安く済むケースあり

香典を当てにする場合は、参列者数と平均額(5,000円~1万円)を予測してシミュレーションしておくと安心です。
6保険や信託の活用で「備え」を形にする
葬儀に備えて事前にお金を準備しておきたい場合は、「葬儀保険」や「生命保険信託」の利用も有効です。
-
葬儀保険
- 月額数千円から加入可能
- 掛け捨てが多いが保険金支払いが早い
- 持病があっても加入できる商品も
-
生命保険信託
- 信託銀行が保険金を分割管理
- 遺族が一括で使い切るリスクを防げる
- 介護・医療費・葬儀費にも使える設定が可能
「自分の葬儀費用で家族を困らせたくない」と考える人にとっては、これらの金融商品は「安心材料」として非常に有効です。
準備こそ最大の節約術

葬儀費用を抑えるために、重要なのは「その場の判断」ではなく「事前の備え」です。
形式・相場・制度・備え――これらを把握しておけば、急な訃報でも動揺せず、経済的にも精神的にも落ち着いて対応できるでしょう。
次は、公的制度の内容をより詳しく掘り下げ、支給条件や申請方法などを整理します。
知らないと損する補助・扶助制度|公的支援の仕組みと活用ポイント
葬儀費用の負担を軽減する手段として、公的な補助制度や扶助制度が用意されていることをご存知でしょうか。これらは国や自治体が設けている正式な支援制度であり、正しく申請すれば数万円~20万円以上の支給を受けられる場合があります。

しかし現実には「存在を知らなかった」「申請期限を過ぎていた」といった理由で、多くの人が受給の機会を逃しています。ここでは、制度の仕組み・対象・注意点を具体的にご紹介します。
活用できる代表的な3制度
埋葬料
-
対象
健康保険の被保険者または扶養者
-
支給額
一律5万円(または実費上限5万円)
-
申請先
協会けんぽ/健康保険組合
-
期限
死亡日の翌日から2年以内
葬祭費
-
対象
国民健康保険・後期高齢者医療制度加入者
-
支給額
自治体による(3万~7万円)
-
申請先
各市区町村の国保窓口
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期限
葬儀日翌日から2年以内
葬祭扶助
-
対象
生活保護受給者または相当困窮者
-
支給額
上限20万6,000円(大人)
-
申請先
福祉事務所(ケースワーカー経由)
-
期限
原則「直葬」「最低限の葬儀」に限る
各制度の違いを整理
対象・金額・条件に注目
上記3制度は似ているようで細かな違いがあります。以下にそれぞれの主な違いを表にまとめました。
項目 | 埋葬料 | 葬祭費 | 葬祭扶助 |
---|---|---|---|
対象 | 社会保険の加入者 | 国保・後期高齢医療 | 生活保護の対象者 |
支給金額 | 5万円 | 3万~7万円(地域差) | 上限20万6,000円 |
申請先 | 健康保険窓口 | 市区町村 | 福祉事務所 |
期限 | 死亡翌日から2年以内 | 葬儀翌日から2年以内 | 事前相談必須・即日対応 |
制度を「使い損ねる」3つの理由
せっかくの制度も、知らなかった・誤解していた・準備ができていなかったなどの理由で利用できないケースが後を絶ちません。
- 制度の存在を知らず、申請期限を過ぎてしまう
- 保険証を返却後に手続き方法が分からなくなる
- 扶助制度は「生活保護者しか使えない」と誤解している

特に生活困窮状態にある世帯は、葬祭扶助制度の活用を検討すべきですが、葬儀後では利用できないため注意が必要です。
申請方法と必要書類の基本フロー
補助制度を活用するには、それぞれの制度ごとに決められた書類を揃え、申請先に提出する必要があります。
- 死亡診断書のコピー
- 葬儀費用の領収書または明細
- 申請者の本人確認書類(健康保険証、マイナンバーカード等)
- 振込先の通帳やキャッシュカードの写し
- 扶養証明や関係性がわかる書類(埋葬料の場合)
健康保険の埋葬料や市区町村の葬祭費は、郵送または窓口申請が基本です。生活保護の葬祭扶助に限っては、事前に福祉事務所へ相談しなければ申請できません。
制度を利用できない場合とは?
補助金の申請には条件があります。以下のような場合には制度の対象外となる可能性があるため、確認が必要です。
- 葬儀を行わずに火葬のみ(直葬)の場合
- 火葬後に制度の存在を知っても、費用の証明が不十分
- 死亡者が保険加入していなかった、資格喪失中だった
- 遺族との関係が証明できない場合(扶養証明書類不備)
たとえば直葬(火葬式)の場合、「儀式性がない」とみなされて葬祭費が支給されない自治体もあります。最低限の式典を行っている記録(式場利用証明書など)があると判断が変わることもあるため、可能であれば簡単な式でも用意した方がよいでしょう。
ケース別:制度の活用ポイント
-
働いていた人が亡くなった場合協会けんぽ・健康保険組合から「埋葬料」が受け取れる可能性大。
勤務先に相談すれば、申請書の取り寄せから案内してくれることが多いです。 -
後期高齢者が亡くなった場合各市区町村の「後期高齢者医療葬祭費」の申請を。
支給額は5~7万円で、書類も比較的簡素。領収書・保険証コピーなどでOK。 -
経済的に困難な場合必ず葬儀前に福祉事務所へ連絡を。無断で葬儀を済ませると、扶助が認められません。
直葬で支給対象となるのは「自治体の規定内で執り行った場合」のみです。
「もらえるはずだった」では済まされない現実
支給額こそ数万円~20万円程度と見えるかもしれませんが、葬儀費用の負担を和らげるうえでこれらの制度は非常に重要です。
特に高齢者が亡くなるケースでは、後期高齢医療制度・国民健康保険・扶助制度の3点セットを事前に把握しておくことで、安心して対応できます。
制度は「情報を持っている人」だけが使えるもの。申請期限や対象条件を見落とさず、使える支援は迷わず活用しましょう。

葬儀費用のトラブル対策|家族で揉めないためにできる準備とは
葬儀の場は、悲しみの中で進められるだけでなく、短期間で多くの決断を求められるタイミングでもあります。そこでしばしば起こるのが「費用に関する家族間のトラブル」。
金銭の問題は感情的な軋轢につながりやすく、「揉めるつもりはなかったのに」「後になって険悪な空気になった」という事例も少なくありません。
この章では、費用をめぐる典型的なトラブル例をもとに、その予防策や円満に進めるための準備ポイントをご紹介します。
よくある費用トラブルの実例
- 「誰が支払うのか」決まっておらず分担でもめた
- 喪主が高額プランを選んでしまい、親族から苦言が出た
- 香典を誰が管理するかで争いに発展した
- 見積もりより高額になり、不信感が残った
- 相続と絡めて費用負担の公平性が問題になった
金銭トラブルは、故人を悼む気持ちに水を差す最も避けたい事態。準備や話し合いで、回避できるものがほとんどです。
トラブルが起こる3つの原因とは?
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1. 役割の曖昧さ喪主や費用負担者の決定が後回しになることで、判断の軸がブレる。
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2. 情報格差見積もりの詳細や内訳を一部の家族しか知らない状況が、不信感を生む。
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3. 感情のすれ違い「ちゃんと送りたい派」と「費用を抑えたい派」が対立しやすい。
この3点を事前に想定し、対策を取ることで多くの衝突は未然に防げます。
家族間の不和を避ける準備リスト
- 喪主と費用の管理者を事前に決めておく
- 故人の希望(形式・宗派・予算)を明文化しておく
- 見積もり明細を家族で共有する
- 香典・相続・預貯金の取り扱い方針を決める
- 意見の分かれる部分は早期に「着地点」を話し合う

中でも「故人の意向」が明確であれば、親族間で揉める可能性は大きく下がります。エンディングノートや遺言書で残してもらうのが理想です。
感情面への配慮も忘れずに
葬儀は費用だけでなく、「心のケア」も大切です。特に親族間の意見が割れた際には、金額の損得以上に、感情的な「納得感」「尊重されたかどうか」が焦点になります。
そのため、家族で共有すべき視点は次の3つです。
- 「この人らしい最期」にできているか
- 「自分の意見だけを押しつけていないか」
- 「費用の話は冷静に、事実ベースで」
費用の問題が「気持ちのすれ違い」に発展しないよう、感情と数字を切り離して考える意識が重要です。
「最期」を穏やかに見送るために

葬儀費用に関するトラブルの多くは、「誰かが悪い」というよりも、「事前の準備と共有が足りなかった」ことに起因しています。
本記事で紹介した平均費用・内訳・形式の違い・補助制度・見積もり術、そして本章のトラブル回避策まで、ひとつずつ事前に知っておくことが、無用な混乱を防ぐ最大の鍵です。
大切な人との最期の時間を、穏やかで悔いのないものにするためにも、できるだけ早く「準備」を始めてみてはいかがでしょうか。