エンディングノートとは?その目的と書き方のポイント

エンディングノートとは?
エンディングノートとは、自分の人生の終盤を迎えるにあたり、考えや希望を整理し、家族や関係者へ伝えるための記録です。特に、万が一の事態に備え、財産管理や医療・介護の方針、葬儀の意向、家族へのメッセージなどをまとめておく役割を果たします。
このノートは、遺言書のような法的な拘束力を持たないものの、残された家族が困らないようにするための情報源として大きな助けとなります。

1-1エンディングノートの役割とは?
エンディングノートは単なるメモ書きではなく、自分の人生を振り返りながら、今後の方針を明確にするためのツールでもあります。人生の最後に向けた準備として、以下のような目的を持つことができます。
1家族への負担を軽減する
- 財産や重要な書類の保管場所を明記することで、家族がスムーズに対応できる。
- 医療や介護の希望を明確にすることで、家族の判断の負担を軽減する。
2自分自身の意思を整理する
- 今後どのように人生を過ごしたいか考える機会になる。
- 延命治療や介護に関する意思を明確にし、自分の希望を形にする。
3大切な人へのメッセージを残せる
- 家族や友人への感謝の言葉を残すことで、想いを伝えられる。
- これまでの人生を振り返り、思い出や考えを記録できる。
エンディングノートは、単に死後の手続きをスムーズにするためだけでなく、「これからの人生をよりよく生きるための準備」としても活用できます。
1-2エンディングノートの特徴
エンディングノートには決まったフォーマットがないため、自分に合った形で自由に記入できるのが特徴です。
1手書きのノートを使用する
- 市販のエンディングノートを購入することもできる。
- 普通のノートや手帳を活用しても問題ない。
2デジタルツールを活用する
- WordやGoogleドキュメントなどで作成することで、簡単に修正・保存ができる。
- クラウド上に保存することで、紛失のリスクを減らせる。
3公的機関や自治体が提供するフォーマットを利用する
- 自治体や法律関連の団体が無料で提供しているものを活用すれば、何を記入すべきか分かりやすい。
1-3エンディングノートを作成する際の注意点
1法的効力はないため、遺言書とは別に作成する
- エンディングノートには法的な拘束力がないため、財産分与を正式に決めたい場合は、遺言書を作成する必要がある。
2必要な情報を明確に書く
- 曖昧な表現ではなく、家族が分かりやすいように具体的に記載することが大切。
3定期的に更新する
- 一度作成したら終わりではなく、状況が変わるたびに書き直すことで、常に最新の情報を記録できる。
4家族にノートの存在を知らせる
- ノートを作成しても、家族が知らなければ意味がないため、信頼できる家族に保管場所を伝えておくことが重要。
1-4エンディングノートは「今」をより良く生きるためのツール
エンディングノートは、単に死後の準備をするためのものではありません。むしろ、これからの人生をどのように過ごしたいのかを考え、今をより充実させるためのツールとして活用できます。
- 「自分の人生で大切にしたいことは何か?」を見つめ直す
- 「どんな最期を迎えたいか?」を考えることで、現在の生き方をより意識できる
- 家族や大切な人に対して、どのように接していきたいかを明確にする
このように、エンディングノートを作成することで、自分の考えを整理し、より充実した人生を送るための指針を持つことができます。
次に、エンディングノートと遺言書の違いについて詳しく解説します。
エンディングノートと遺言書の違い
エンディングノートと遺言書は、どちらも自身の意思を残すための重要な手段ですが、目的や法的な効力に違いがあります。それぞれの違いを理解し、適切に活用することが大切です。2-1エンディングノートと遺言書の主な違い
項目 | エンディングノート | 遺言書 |
---|---|---|
法的効力 | なし | あり |
記載内容の自由度 | 自由(医療、介護、葬儀、財産など) | 財産の分配に限定される |
作成方法 | 自由(手書き・デジタルなど) | 法律で定められた形式がある |
作成費用 | 基本的に無料(市販のノートもあり) | 数千円~数万円(公証役場利用時) |
確認のタイミング | いつでも閲覧・更新可能 | 原則として本人の死後に開封 |
エンディングノートは、法的な拘束力を持たないため、財産分配の指定には適していません。しかし、医療や介護、葬儀の意向、大切な人へのメッセージなどを自由に記載することができるため、補助的な役割として非常に有用です。
2-2遺言書の種類と特徴
遺言書には、以下の3つの種類があります。
1自筆証書遺言
- 本人が全文を手書きで作成し、署名・押印を行う。
- 費用がかからず簡単に作成できるが、内容が不明確だと無効になる可能性がある。
- 2020年から、財産目録のみパソコンで作成することが可能になった。
2公正証書遺言
- 公証役場で公証人が作成し、法律的に確実な形で残せる。
- 費用がかかるが、偽造や紛失のリスクがなく、確実に執行される。
3秘密証書遺言
- 本人が作成した遺言書を封印し、公証役場で証明を受ける。
- 内容の秘密が守られるが、開封後に形式不備があると無効になる可能性がある。
2-3エンディングノートと遺言書を組み合わせて活用する
エンディングノートと遺言書は、それぞれの特性を理解したうえで併用することで、よりスムーズな相続や意思伝達が可能になります。
- 遺言書で法的な効力をもたせる部分(財産分与など)を決める。
- エンディングノートで、葬儀や医療・介護の希望、大切な人へのメッセージなど、自由に書き残す。
例えば、「財産は長男に相続させる」と遺言書に明記し、「その理由や自分の考え」はエンディングノートに詳しく書いておくことで、相続争いを防ぐことができます。
2-4エンディングノートだけでは不十分なケース
エンディングノートはあくまで補助的なものであり、以下のような内容については正式な手続きを行う必要があります。
-
財産の相続を明確にしたい場合遺言書を作成する
-
延命治療の拒否や臓器提供の意思を法的に示したい場合尊厳死宣言書や事前指示書を用意する
-
成年後見制度を利用したい場合司法書士や弁護士に相談する
エンディングノートは自由に記入できる便利なツールですが、財産相続など法的な効力が必要な内容は遺言書を作成する必要があります。どちらも目的に応じて使い分けることで、円滑な意思伝達と安心した人生設計が可能になります。
次に、エンディングノートに記載すべき具体的な内容について解説します。
エンディングノートに記載すべき内容
エンディングノートには決まった形式がなく、自由に記入できます。しかし、何をどのように書けばよいのか迷うこともあるでしょう。そこで、エンディングノートに記載すると役立つ情報を整理し、重要なポイントを交えながら詳しく解説します。

3-1財産・資産に関する情報の整理
自分の財産について明確に記録しておくことで、家族が相続や手続きをスムーズに進められます。特に、どこに何があるのかをまとめておくことで、遺族が不要な手間を省くことができます。
記載しておくべき主な項目
-
銀行口座情報銀行名・支店名・口座番号・キャッシュカードの保管場所
-
金融資産株式、投資信託、債券、暗号資産(仮想通貨)などの詳細情報
-
不動産情報登記情報、所有している土地・建物の所在地、賃貸契約の有無
-
保険契約情報生命保険、医療保険、火災保険、自動車保険など
-
借入金・ローン情報住宅ローン、クレジットカードの未払い残高、消費者金融からの借り入れ
-
貴重品や高額な所有物の情報宝石、骨董品、高級車など
-
電子マネー・ポイントサービスの残高PayPay、楽天ポイント、マイルなど
ポイント
明確にする
正直に記載
デジタル資産も忘れずに
3-2医療・介護に関する希望を明確に
病気や老後の介護に関する希望を記載しておくことで、万が一、意思表示ができなくなった際に家族が迷わず判断できます。特に、終末医療や延命治療の方針は、事前に決めておくことで家族の負担を減らすことができます。
記載しておくべき主な項目
- かかりつけの病院・主治医の名前と連絡先
- 持病・アレルギー・常用薬のリスト
- 緊急時の対応希望(救急搬送の可否、輸血の希望など)
- 延命治療についての方針(人工呼吸器、心肺蘇生、胃ろうなどの有無)
- 認知症になった場合の方針(施設への入居、自宅介護の希望)
- 介護サービスを利用したいかどうか(デイサービス、訪問介護、老人ホームなど)
- 医療保険・介護保険の加入情報(加入している保険会社と契約内容)
ポイント
できるだけ具体的に記載
話し合って決める
リスト化
3-3葬儀・供養に関する希望を記録
亡くなった後の葬儀や供養に関する意向をエンディングノートに書いておくことで、家族が適切に準備を進めることができます。特に、宗教的なこだわりがある場合や、身寄りの少ない場合は、より詳細に記載することが重要です。
記載しておくべき主な項目
- 希望する葬儀の形式(家族葬、一般葬、無宗教葬など)
- 喪主を誰に任せたいか
- 葬儀の場所や参列者の範囲(どの会場で、誰を呼びたいか)
- 宗教・宗派の有無と、必要な儀式(菩提寺がある場合はその詳細も記載)
- 埋葬方法の希望(墓地、納骨堂、樹木葬、散骨など)
- 戒名の希望(希望する宗派の戒名がある場合)
- 死亡通知を出す範囲(仕事関係者や友人への連絡の有無)
- 葬儀費用の予算(事前に用意しているお金の有無や、負担方法)
ポイント
明確に書く
詳細に記載
3-4家族や親しい人へのメッセージを残す
エンディングノートは、家族や親しい人に感謝の気持ちを伝えたり、人生の想いを残す貴重な手段でもあります。遺言書には法的な効力を持たせる必要がありますが、エンディングノートでは自由な言葉で伝えたいことを記録することができます。
記載しておくべき主な内容
- 家族への感謝の言葉(妻・夫、子ども、兄弟姉妹など)
- 友人や仕事関係者へ伝えたいこと
- 人生で大切にしてきた価値観や考え方
- 心残りになっていること(謝罪の言葉など)
- 将来の家族への願い・アドバイス
- 趣味や思い出を振り返るメッセージ
ポイント
言葉を大切にする
交えると伝わりやすい
遺された人への励ましも書く
3-5デジタル遺産とオンラインサービスの管理
近年、スマートフォンやパソコン、SNSアカウント、ネット銀行などのデジタルデータの管理も重要になっています。特に、オンライン上のサービスは、適切に整理しておかないと、家族が手続きを進める際に大きな負担となる可能性があります。
記載しておくべき主な内容
- スマホやパソコンのログイン情報(機種・ID・パスワード)
- メールアドレスとログイン情報
- SNSアカウントの処理方法(Facebook、Instagram、X(旧Twitter)など)
- クラウドストレージの管理(Google Drive、Dropboxなど)
- ネット銀行・電子マネーの情報(暗号資産含む)
- サブスクリプションサービスの解約情報(Netflix、Amazonプライム、Spotifyなど)
- オンラインショッピングのアカウント情報(楽天、Amazonなど)
ポイント
整理して安全に保管する
明記する
解約手続きを忘れずに
3-6ペットの世話に関する情報を残す
ペットを飼っている場合、飼い主が亡くなった後の世話について事前に考えておくことがとても重要です。ペットが飼い主を失った場合、引き取り手がいなければ保護施設に預けられたり、最悪の場合、処分されてしまうケースもあります。エンディングノートにペットの世話について詳しく記録しておくことで、ペットの未来を守ることができます。
記載しておくべき主な内容
- ペットの名前・種類・年齢
- 性別・避妊去勢の有無
- 好きな食べ物・おやつ
- アレルギーや持病、常用薬の情報
- かかりつけの動物病院と連絡先
- 毎日の生活習慣(散歩の時間、遊びの好みなど)
- 引き取り先の希望(家族・友人・動物保護団体など)
- 世話をしてくれる人に向けたメッセージ
ポイント
詳細に記録する
連絡先を確保する
考えておく
3-7知人・友人・関係者の連絡先リスト
万が一の際、家族が誰に連絡を取るべきかを整理しておくことで、スムーズに対応できます。特に、仕事関係や親しい友人、遠方の親族など、家族がすぐに把握できない人の連絡先をまとめておくことが重要です。
記載しておくべき主な内容
- 家族以外で連絡を取るべき人物のリスト(親しい友人・恩師・昔の同僚など)
- 仕事関係の連絡先(会社・取引先・お世話になった人)
- 地域の知人や近所の付き合い(自治会やサークルの関係者など)
- 宗教関係の連絡先(所属している宗教団体・菩提寺の住職など)
- 弁護士・税理士・金融機関の担当者情報
- その他、必要な手続きをサポートしてくれる人の情報
ポイント
リストアップ
連絡できるようにする
3-8生活のこだわりや習慣について
人生の終盤に差し掛かり、介護や看護を受けることになった際、「どのように生活したいか」を記しておくことで、自分らしい暮らしを維持しやすくなります。日々の習慣やこだわりを家族に伝えることで、介護の方針を決める際の参考になります。
記載しておくべき主な内容
- 好きな食べ物・苦手な食べ物
- 朝の習慣や寝る前のルーティン(散歩・読書・音楽を聴くなど)
- 服装のこだわり(着慣れた服・肌触りの良い素材など)
- 趣味や楽しみにしていること(映画・園芸・音楽など)
- 人付き合いの好み(静かな環境が好き、人と話すのが好きなど)
- 外出・旅行の希望(できる限り外出したい、家で過ごしたいなど)
- 動物や植物との関わり(ペットとの時間が大切、庭の手入れが趣味など)
ポイント
こだわりを記録
希望を記載
生活方針も考える
3-9公的手続きや重要書類の保管場所
亡くなった後、家族が直面するのは、役所や金融機関でのさまざまな公的手続きです。これらの手続きをスムーズに行うためには、どこに何の書類があるのかを記載しておくことが不可欠です。
記載しておくべき主な内容
- マイナンバーカードの保管場所
- 健康保険証・介護保険証の有無と保管場所
- 年金手帳の所在(公的年金・企業年金・個人年金など)
- 戸籍謄本・住民票・印鑑登録証
- 不動産の権利証や固定資産税の納税通知書
- 銀行の通帳やカードの保管場所
- 契約書類(賃貸・持ち家・遺言書・保険契約など)
- 税金・公共料金・クレジットカードの支払い状況
ポイント
明記する
リスト化する
事前に済ませておく
3-10相続や遺産分割の希望
エンディングノートには法的効力はありませんが、遺産の分け方についての考えを書いておくことで、家族のトラブルを防ぐ一助となります。特に、財産の分配について遺言書を作成していない場合、家族の話し合いの際に参考にされることが多いため、希望を書いておくと良いでしょう。
記載しておくべき主な内容
- 相続財産の大まかな内訳(不動産・預貯金・株式など)
- 誰にどの財産を譲りたいかの希望
- 相続税の負担についての考え(必要な準備があるか)
- 遺言書の有無と保管場所
- 遺品整理の方針(処分してほしいもの・大切にしてほしいもの)
ポイント
その旨を記載
財産がある場合は詳細に書く
明確にする
エンディングノートには、上記のような情報を記載することができますが、必ずしもすべて書く必要はありません。重要な部分から少しずつ書き進めていくことがポイントです。
次に、エンディングノートを作成することのメリットについて順を追ってご紹介します。
エンディングノートを作成するメリット
エンディングノートを作成することで、自分の意志を整理できるだけでなく、家族の負担を軽減したり、財産管理を円滑に進めることができるなど、多くの利点があります。

4-1自分の意志を明確にできる
エンディングノートを作成する最大のメリットは、自分自身の希望を明確に整理できることです。
- 「どのような最期を迎えたいか」
- 「医療や介護に関してどのような対応を希望するか」
- 「家族や大切な人に伝えたいメッセージは何か」
こうしたことを考え、記録することで、自分自身の価値観を再確認する機会にもなります。また、ノートを書き進めることで、「もしものとき」に備える心の準備ができるという精神的な安心感も得られます。
ポイント
- 自分の人生の方向性を見つめ直すきっかけになる。
- 介護・医療・葬儀の希望を明確にすることで、家族の判断を助けられる。
- 一度書いた内容も、気持ちの変化に応じて修正しやすい。
4-2家族の負担を軽減できる
人が亡くなった後、遺族は葬儀の手配、財産管理、公的手続きなど、多くのことを短期間で行わなければなりません。エンディングノートがあると、必要な情報がまとまっているため、家族が迷わずに手続きを進めることができます。
特に以下のような場面で、エンディングノートは大きな助けになります。
-
「どのような葬儀を行えばいいかわからない」ノートに書かれていれば、その指示に従うことができる。
-
「財産や負債がどこにあるのかわからない」口座情報や重要書類の場所が記されていれば、手続きがスムーズに進む。
-
「ペットの世話をどうするかわからない」引き取り先や日常の世話について記載されていれば、適切に対応できる。
ポイント
- 残された家族が「何をすべきか」を明確に知ることができる。
- 遺族同士の意見の食い違いを防ぎ、トラブルを回避できる。
- 「故人の希望を尊重できる」という精神的な安心感を遺族に与えられる。
4-3相続トラブルを防ぐことができる
遺産相続の際、相続人同士の意見が食い違うことは少なくありません。特に、故人が生前に何も意思を伝えていなかった場合、「財産をどう分けるべきか」を巡って争いになることもあります。
エンディングノートには法的効力はありませんが、財産分割の考えや、家族へのメッセージを記しておくことで、相続人の話し合いの参考になります。
例えば、次のような内容を書いておくことで、トラブルを防ぐことができます。
- 「この家は長男に引き継いでほしい」
- 「預貯金のうち○○万円は孫の学費に使ってほしい」
- 「遺産をできるだけ平等に分けるようにしてほしい」
また、財産情報をリスト化しておくことで、相続人が探し回る手間を省くことができます。
ポイント
- 財産の所在や負債の状況を明確にしておくことで、相続手続きをスムーズに進められる。
- 家族間の遺産争いを防ぐための指針となる。
- 遺言書と併用することで、より法的に確実な相続手続きを実現できる。
4-4認知症や判断能力の低下に備えられる
高齢になると、認知症や病気などにより判断能力が低下し、自分の意志を伝えることが難しくなることがあります。
エンディングノートを作成することで、以下のような状況に備えることができます。
- 「認知症が進行した場合、どのような介護を希望するか」
- 「財産管理を誰に任せたいか」
- 「延命治療の希望を事前に決めておく」
また、成年後見制度の利用を考えている場合、その手続きを誰に依頼するのかを記録しておくとスムーズです。
ポイント
- 自分の判断力があるうちに、将来の希望をまとめておくことが大切。
- 介護や治療の方針を明確にすることで、家族が意思決定をしやすくなる。
- 成年後見制度や財産管理の方針を記録しておくことで、スムーズな対応が可能になる。
4-5精神的な安心感が得られる
エンディングノートを作成することで、「万が一のことがあっても準備ができている」という安心感を持つことができます。特に、高齢になると「家族に迷惑をかけたくない」「自分の意志をしっかりと伝えたい」という思いが強くなることがあります。
- 「自分の希望をしっかり残せた」という安心感
- 「家族が困らずに済む」という安心感
- 「死後のことを整理し、今をより大切に生きられる」という前向きな気持ち
これらの気持ちを持つことができるため、エンディングノートの作成は、単なる死後の準備ではなく、残りの人生を充実させるための大切な作業ともいえます。
ポイント
- 書き終えることで「準備が整った」という安心感が生まれる。
- 「今をどう生きるか」を考えるきっかけになる。
- 自分の人生を振り返り、納得のいく形で整理できる。
4-6デジタル資産の管理ができる
近年、ネット銀行、仮想通貨、SNSアカウントなど、デジタル資産の管理が重要になっています。これらのアカウントが適切に整理されないと、遺族が手続きに苦労したり、不正アクセスのリスクが高まったりする可能性があります。
エンディングノートに記載しておくべきデジタル資産の情報
- スマートフォンやパソコンのパスワード情報
- メールアカウント(Gmail、Yahoo!メールなど)
- SNSアカウント(Facebook、Instagram、X(旧Twitter)など)
- クラウドサービス(Google Drive、Dropbox、iCloudなど)
- オンライン銀行・電子マネー(PayPay、楽天ペイ、暗号資産など)
- サブスクリプションサービス(Netflix、Amazonプライム、Spotifyなど)
ポイント
処理方法を決める
4-7遺品整理の方針を決められる
亡くなった後、家族が困るのが遺品整理の方法です。エンディングノートに「どの遺品をどのように処理してほしいか」を書いておくことで、家族の負担を減らすことができます。
記載しておくべき遺品整理の方針
- 思い出の品を残すのか処分するのか(アルバム、手紙、趣味のコレクションなど)
- 衣類や家具の処分方法(寄付するのか廃棄するのか)
- 形見分けの希望(誰に何を譲るのか)
- 本・CD・DVDなどの整理方法(処分・寄贈・売却の希望)
ポイント
ほしいもの」を明確に分ける
譲りたいものがあればリスト化
依頼するかどうかの希望を記載
4-8終末期の過ごし方を考えることができる
エンディングノートを作成することで、終末期の生活をどのように過ごしたいかを整理することができます。高齢になると、病気や介護が必要になる可能性が高まるため、自分がどのように生きたいかを明確にしておくことが重要です。
記載しておくべき終末期の希望
- 自宅療養と病院療養のどちらを希望するか
- 緩和ケアの希望(痛みを和らげるための医療方針)
- 余生の過ごし方(趣味を楽しむ、家族と過ごす時間を大切にするなど)
- 死後の整理をどう進めるか(葬儀、遺品整理、相続などのタイミング)
ポイント
かを明確にする
希望を記す
家族に伝えておく
4-9家族・友人との時間を見直すきっかけになる
エンディングノートを書くことで、人生の残りの時間をどう過ごしたいのかを考える機会にもなります。普段、忙しい日々を送っていると、つい「家族や友人と過ごす時間」を後回しにしがちです。しかし、ノートを書くことで、「今のうちに大切な人ともっと時間を作ろう」と思えるようになります。
記載しておくべきこと
- 会いたい人・話しておきたい人のリスト
- 感謝を伝えたい人へのメッセージ
- 家族との時間をどう過ごしたいか(旅行・食事・イベントなど)
- 友人や恩師への再会の希望
ポイント
きっかけにする
エンディングノートを作成することで、単に「死後の準備をする」だけでなく、人生をどう生きるかを見直す機会にもなります。自分の価値観や希望を整理し、家族や大切な人に迷惑をかけず、納得のいく人生を送るための大切なツールとして活用しましょう。
エンディングノートを無理なく書き進めるためのポイント
エンディングノートを書くことは、自分の人生を整理し、家族の負担を減らすためにとても有意義な作業です。しかし、何を書けばよいのかわからない、途中で手が止まってしまうという人も少なくありません。そこで、無理なくスムーズにエンディングノートを作成するための工夫や考え方をポイントを押さえて解説します。

5-1完璧を目指さず、思いついたことから書き始める
エンディングノートは公的な書類ではないため、形式にこだわる必要はありません。最初から完璧にまとめようとすると、なかなか手が進まないため、「とりあえず書き出してみる」というスタンスが大切です。
書き始める際のポイント
-
箇条書きやメモでもOKまとまった文章を書かなくても、「伝えたいこと」を一言メモしておくだけで十分役立つ。
-
思いついたことから順不同で記入目次の順番通りに書く必要はなく、書きやすいところから進める。
-
気が向いたときに少しずつ書く一気に仕上げる必要はなく、時間をかけて書き進めていく。
コツ
- 1ページ目から書こうとせず、興味のある項目から始める。
- あとで加筆・修正ができるので、とにかく書き出してみることが大事。
- 文字にこだわらず、簡単なイラストや図で表現してもOK。
5-2気軽に書ける「日常のこと」から手をつける
エンディングノートは相続や医療、葬儀のことを書くためのものというイメージを持つ人が多いですが、実際にはもっと自由に書いていいものです。特に、「死後のこと」ばかりを考えていると筆が進みにくくなるため、まずは自分の日常や思い出について書くことから始めてみるのもよいでしょう。
書きやすいテーマの例
- 好きな食べ物・苦手な食べ物リスト
- お気に入りの本・映画・音楽
- 子どもの頃の思い出や、楽しかった旅行の記録
- 自分が好きな言葉・座右の銘
- 人生で一番感動した出来事
コツ
- まずは「自分を知るためのノート」として書き進める。
- 家族が読んで「こういう一面もあったんだ」と思える内容を入れる。
- 楽しいことや幸せな思い出を振り返ることで、前向きに書き進められる。
5-3「もしものときの情報整理」として活用する
エンディングノートは、書き終えなくても、途中まででも十分に役立つものです。たとえば、自分が病気や事故で意識を失ったとき、家族が困らないように最低限の情報をまとめるだけでも有益です。
最低限まとめておきたい情報
-
持病・アレルギー・常用薬の記録かかりつけ医や服用している薬の名前など。
-
緊急連絡先リスト家族、親族、友人、主治医、弁護士など。
-
銀行口座や金融資産の一覧「どこの銀行に口座があるのか」だけでも書いておく。
-
スマホやパソコンのロック解除方法必要最低限のデジタル資産管理。
-
保険証や年金手帳の保管場所いざというときに見つかるように明記。
コツ
- すべての情報を完璧に書かなくても、家族が探しやすくなるだけで十分役立つ。
- 「最低限のことだけでも書いておく」と考えると気が楽になる。
- 項目ごとに分けて、思いついたときに少しずつ記入する。
5-4「手書き」と「デジタル」、自分に合った方法を選ぶ
エンディングノートには、手書きのノートで作成する方法と、デジタルデータ(パソコンやスマホ)で管理する方法があります。どちらが良いかは、自分のライフスタイルに合わせて選ぶとよいでしょう。
手書きノートのメリット
- アナログなので、家族がすぐに読める。
- 書きたいときに気軽に記入できる。
- 手書きの温かみがあり、家族に気持ちが伝わりやすい。
デジタルデータのメリット
- パソコンやスマホで簡単に更新できる。
- 文字がきれいで、読みやすい。
- パスワード管理をすれば、プライバシーを守れる。
コツ
- 「大事なことは手書き」「補助的な内容はデジタル」と併用するのもアリ。
- デジタルで作成する場合は、家族がアクセスできるようにパスワードを管理する。
- 「紙のノートは失くしやすい」「デジタルは家族が開けないかも」など、自分に合った方法を選ぶ。
5-5気持ちが乗らないときは「未来の自分へ手紙を書く」
エンディングノートを書くことに対して、気が進まない、気分が沈んでしまうという人もいるでしょう。そのような場合は、「未来の自分へ宛てた手紙」として、気軽に書いてみるのもおすすめです。
書く内容のアイデア
- 「○年後の自分はどんな気持ちでいるだろう?」と問いかける。
- 「今後の目標や叶えたい夢」をリストアップする。
- 「家族や大切な人と、これからどんな時間を過ごしたいか」を考える。
- 「こんな老後を送りたい」「こんな最期を迎えたい」など、希望を書き留める。
コツ
- 「エンディングノート=死後の準備」という考えを変える。
- 未来を考えるためのノート」として前向きに捉える。
- 一度書いてしまえば、あとは必要な情報を追加しやすくなる。
書いたエンディングノートの保管方法と家族への共有の仕方
エンディングノートを作成した後、大切なのは「家族が適切に見つけられるように保管すること」です。せっかく書いても、家族がノートの存在を知らなければ、役立てることができません。ここでは、安全な保管方法や、家族とどのように共有すればよいのかを背景や理由も含めてお伝えします。6-1家族が見つけやすく、かつ安全な場所に保管する
エンディングノートは貴重な個人情報が記載された大切な書類なので、見つけやすいけれども、第三者に悪用されない場所に保管することが重要です。
おすすめの保管場所
-
家の中の決まった場所本棚や机の引き出しなど、家族がすぐに見つけられる場所に置いておく。
-
鍵付きの引き出しや金庫銀行口座情報や資産リストがある場合、金庫やセキュリティボックスで管理するのも良い。
-
「エンディングノート専用のファイル」を作成他の重要書類(保険証書、遺言書、財産リストなど)と一緒にまとめておく。
-
デジタル版の場合は、USBメモリやクラウドに保存家族にパスワードを伝えておくことで、アクセスしやすくする。
コツ
- 「ノートの存在」と「保管場所」を家族に伝えておく。
- 必要に応じてコピーを作成し、複数の場所に保管する。
- 防火・防水対策を考え、防災グッズの近くに置くのも一案。
6-2家族とどのように共有するか
エンディングノートは死後のためだけではなく、生前から家族と話し合うためのツールとしても活用できます。
家族と共有する方法
-
家族会議を開く「エンディングノートを作成したので、こんな内容を書いたよ」と伝え、家族の意見も聞いてみる。
-
部分的に内容を見せる「財産については後でいいけど、医療・介護の希望だけは共有しておきたい」など、見せる範囲を調整する。
-
コピーを信頼できる家族に預ける家族の中で特に信頼できる人(配偶者・長男長女など)に、コピーを持ってもらう。
-
デジタルデータの場合、家族にアクセス方法を教えるUSBメモリやクラウドストレージに保存し、家族にパスワードを伝えておく。
コツ
- 「家族にとっても役立つ情報だから共有したい」というスタンスで伝える。
- あまり重々しくせず、気軽な雰囲気で話すと受け入れられやすい。
- 家族に「ノートの内容を修正・更新する可能性がある」と伝えておく。
6-3定期的に見直し・更新する
エンディングノートは、一度書いたら終わりではなく、ライフステージの変化に応じて更新することが重要です。
更新のタイミング
-
1年に1回、見直す習慣をつける誕生日や年末年始など、毎年の節目に見直すと良い。
-
家族構成が変わったとき結婚・出産・離婚・親族の他界など、ライフイベントがあったときに書き換える。
-
財産状況に変化があったとき新しい銀行口座を開設したり、不動産を購入した場合に更新。
-
健康状態が変化したとき病気の診断を受けたり、介護の必要性が高まった場合に見直す。
コツ
- 「エンディングノートの更新日」を書き記しておくと、どれくらい古い情報かが分かりやすい。
- 内容を変更したら、家族にも伝えておくと安心。
- 「全部書き直す」のではなく、「変更があった部分だけ修正」するのが楽。
6-4法的に重要な事項は「遺言書」も検討する
エンディングノートは自由に書ける一方で、法的効力はありません。特に、財産分与に関する内容は、エンディングノートでは法的に認められないため、正式な遺言書を作成することが推奨されます。
遺言書を検討すべきケース
- 財産を特定の人に相続させたい(例えば、「この家は長男に譲りたい」など)
- 相続人同士でトラブルを避けたい(親族間のもめごとを防ぐため)
- 家族以外の人に財産を譲りたい(事実婚のパートナーや友人など)
コツ
- 「遺産相続の意思」を明確にしたいなら、公正証書遺言を作成する。
- エンディングノートはあくまで補助的なものとして活用する。
- 遺言書の作成について、司法書士や弁護士に相談すると確実。
エンディングノートを活用して、充実した人生を送る
エンディングノートは、単に「死後の準備をするためのもの」ではありません。「自分の人生を振り返り、家族に思いを伝え、よりよい未来を考えるためのツール」として活用できます。

エンディングノートを作成することで得られるもの
- 自分の人生を整理し、希望を明確にできる。
- 家族の負担を軽減し、スムーズな対応ができるようになる。
- 財産や医療・介護に関する希望を記録することで、トラブルを防ぐことができる。
- 「まだやりたいこと」を考えるきっかけになり、前向きな人生を送れる。
最後に、エンディングノート作成のポイント
- 「とりあえず書く」ことが大事。完璧でなくてもOK!
- 自分のペースで少しずつ進めると、負担なく書き進められる。
- 家族と共有することで、さらに意義のあるノートになる。
人生の終盤を迎える準備だけでなく、「今をどう生きるか」を考えるためにも、エンディングノートを活用してみてください。